2017年06月14日
「中級へ行こう」2課の「〜のでしょうか」と「自他動詞の整理」で学生の目からボロボロ鱗が落ちたっぽい
こちらのエントリ(自動詞と他動詞の復習をした結果・・・皆ある意味クリエイティブだった)でも書きましたが、先週から「自他動詞の整理」を文法の授業としてやってます。
一方、同時進行で「総合」として「中級へ行こう」を使っているんですが、時々その中の文法項目と文法の授業でやってる項目がカブってしまうことがあります。
今回は、同じ項目を扱うので「自他動詞」に限り文法と総合をミックスして、上記のエントリとは逆バーションの自他動詞のペアのリストを配り、やらせました。
どういうことかというと、前回は他動詞が書かれていてその自動詞を考えるという問題だったんですが、今回は自動詞が書かれていてその他動詞を答える問題。
先週目にしているはずだからスラスラやって欲しかったんですが、やっぱりある程度の時間はかかりました。
とはいうものの、初めてやらせてみたときよりは、正答率が相当上がってたのでその点は良かったです。
ちょっとでもやったことが頭の中に残ってる、ってことだから。
そして今回は、まず自動詞と他動詞のイメージを伝えるところから。
私「皆さんは、自動詞とはどういうイメージで、他動詞はどういうイメージか分かりますか?というか、自動詞や他動詞に対するイメージを持ってますか?」
学生たち「・・・・・。」
私「はい、よく分かりました。イメージは特に無いってことですね!」
学生たち、苦笑。
そこで、私は他動詞とはこういうもので、自動詞とはこういうものだっていうイメージを具体的な動詞を挙げて絵に描いてみました。
さらに、一番お調子者のベトナム人男子に、「〇〇さんが一番好きな他動詞はなに?」っていう無茶な質問を投げかけてみたところ、
ベトナム人男子「一番好きな他動詞?・・・・・『勉強します』です。」
私「何を勉強しますか?」
ベトナム人男子「日本語です。」
ここで私は、〇〇さんと日本語の関係を絵で板書して、
私「〇〇さんが日本語を勉強した後、何がどうなる?」
学生たち「日本語が上手になります?」
私「(ホンマか?)うん、でもそれは何がどうなった結果、日本語が上手になるんですか?」
学生たち「日本語が〇〇さんの頭に入ります。」(※この文に至るまで色々出てきたんですけど、長くなるから割愛)
私「そうですね。それで、『勉強します』は自動詞ですか?他動詞ですか?」
学生たち「他動詞です。」
私「つまり、他動詞っていうのは『他』という字が使われている通り、他動詞の動作や行動の後で『他から(自分に)』、『(自分が)他に』影響や変化を生じさせるんです。だから他動詞っていうんですよね。」
私「反対に、自動詞っていうのは『自』という字からも分かるように、自分だけで他者は関係なく自己完結します。だから自動詞なんです。」
まず、ここで目から鱗ボロボロ1回目。
あとはさらに、「よく留学生が小論文でやってしまう間違いで、『他動詞を使っているのに目的語が無い』っていうパターンがあるけど、そういう文を読んだり聞いたりした人は、何の話かわからないから、必ず『〜を』の部分を忘れないように!」っていう注意もしました。
次に、よく学生が混同する「意志動詞&無意志動詞」との違いを図示。
何が何の上位概念なのか?また、そこに当てはまる動詞は何なのか?といったところまで説明。
これは以前、勉強会でも取り上げ、その時に私が作った表を使いました。
ここで目から鱗ボロボロ2回目。
今ふと思ったのは、この図に一部空欄を作って、問題としてもう一度考えさせてみるのも面白いかも。
それから、学生から質問があったので、
・〇〇さんは受験する大学を決めました。
・受験する大学が決まりました。
の違いも説明。
そして、ちょっと練習。
次に、他動詞だけ使える用法を提示。
特に、こういうペアになる動詞でよく使われる表現だから、このタイミングで教えることに。
私「例えば皆さんが飲食店のアルバイトで皿を洗っていて、手が滑ってその皿が割れてしまいました。そして、それを店長さんに報告する場合、次の2つの文のどっちを言いますか?」
1 お皿が割れてしまいました。
2 お皿を割ってしまいました。
これには、「1です!」、「2です!」など答えはバラバラ。
私「じゃーこの2つはどういうふうに違うと思う?日本人はどう使い分けてると思う?」
学生「・・・・・(しばし沈思黙考)」
私「じゃー、この2つの文を言われた店長は、それぞれどういう印象を持つと思う?」
学生「あ、1は『私は関係ないです』っていう感じがします。」
私「そう!1の文は、私には責任がありませんよっていうことが言いたい時に使われる言い方です。」
で、2は他動詞であり意志動詞が使われているんだけど、もともとそうしようという意志は無いんだけど、責任は私にありますという時に使う、と説明。
ここで、鱗ボロボロ3回目。
私「みなさん、これからも日本社会で生きていくんだったら、自分が失敗した時のモノの言い方にも気をつけないとね。」
学生「うんうん」
そして、ここで、「今までに私がやってしまった、一番大きい失敗」について書かせました。
パーっと見たんですが、自他動詞以外の問題も孕んでいることに気づいたので、次回は予定を変えてその文法をしようと思ってます。
☆☆☆☆☆☆☆
次に、「中級へ行こう」の2課の文法「〜のでしょうか」。
まあこれは、概念自体は別段難しい文法ではありません。
ただ、気をつけないといけないのが、それを発言してる人の気持ち。
教科書には「疑問に思うことを丁寧に問いかける」という説明があり、それはそれで間違ってはいないと思うんですが、ちょっと足りない部分があるんじゃないかと。
私の分析では、この文法は
1 疑問詞がある文
2 疑問詞が無い文
で、ニュアンスがちょっと変わってくると考えています。
1の疑問詞がある文であれば、教科書の説明だけでいけると思います。
・この場所にはどう行ったらいいのでしょうか。
・この宿題はいつまでに出せばいいのでしょうか。
などです。
ただ、2の場合はどうでしょう?
・田中さんは明日会社に来るのでしょうか。
・彼は第一志望の大学に合格するのでしょうか。
いかがでしょう?
ちょっと1の場合とは違っていると思いませんか?
まだピンと来ないあなたもうちょっと色々な言葉を付け加えた文を読んで、どう感じるでしょうか?
・このまま金融緩和を続けていて、景気が回復するのでしょうか。
・この方法で勉強したら、成績が上がるのでしょうか。
はい、もう分かりましたね?
そうです。「〜のでしょうか」の疑問詞が含まれていない文は、話者がその実現(後件部分)に懐疑的な場合、あるいは多分そうはならないんじゃないの?って思ってるような場合です。
そうなると、外国人留学生を混乱させてしまうのが、「〜のではないでしょうか」の存在。
この形だとスピーチなど、ある程度限定された場面で使われますが、これをさらに「〜のではないだろうか」にすると、途端に使用される場面の範囲が広がります。
特に、読解と小論文。
読解に関しては、日本語能力試験(JLPT)でも留学試験(EJU)どちらにもよく出て来るし、小論文に至っては「〜と思う」一辺倒ではなく表現の幅も広げられ、おまけにこの表現を使うと字数も稼げたりします。
「〜のではないだろうか」っていうのは、「〜のでしょうか」と反対で、「〜」の内容の実現の可能性があると思っている場合。
で、この「〜のではないでしょうか」は前件に「て形接続」は来ないので部分的に若干変えて、上の例に当てはめるとこうなります。
・このまま金融緩和を続ければ、景気が回復するのではないでしょうか。
・この方法で勉強したら、成績が上がるのではないでしょうか。
やっぱり、後件が実現する可能性があると思っている場合の文ですよね?
っていうようなことを説明したとこで、最後の鱗を流してたみたいです。
このクラスはリアクションが非常に素直で分かりやすいので、日本語の新しい知識を得るとホンマにどよめいてくれて、こちらとしても教えがいがあります。
「そうだったんだ!」
「知らなかった!」
「勉強になる〜!」
などと、今まで日本語学校で勉強していたことなどなかったような様子で、平気でこういうことを言います。
特にベトナム人男子の1人は、彼が今まで知らなかったことを私が教えると、目は大きく見開き口もあんぐり開けて驚愕の表情をしてくれます。
週1回はその表情が見られるので、それが楽しみでこのクラスで日本語教えてます。
ただ、こういうクラスで気をつけないといけないのは、定着の度合い。
ただ授業が楽しかった、ってだけで終わらせたくもないんですよね。
なので、
1 アウトプットの練習
2 宿題
3 復習テスト
の組み合わせで、少しでも学生がその文法に触れる機会を増やして、まだ間違っている部分があれば修正してもらいたいなって、思ってます。
それから、この後次回の勉強会の告知のエントリを描きます.
ほな、さいなら!
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一方、同時進行で「総合」として「中級へ行こう」を使っているんですが、時々その中の文法項目と文法の授業でやってる項目がカブってしまうことがあります。
今回は、同じ項目を扱うので「自他動詞」に限り文法と総合をミックスして、上記のエントリとは逆バーションの自他動詞のペアのリストを配り、やらせました。
どういうことかというと、前回は他動詞が書かれていてその自動詞を考えるという問題だったんですが、今回は自動詞が書かれていてその他動詞を答える問題。
先週目にしているはずだからスラスラやって欲しかったんですが、やっぱりある程度の時間はかかりました。
とはいうものの、初めてやらせてみたときよりは、正答率が相当上がってたのでその点は良かったです。
ちょっとでもやったことが頭の中に残ってる、ってことだから。
そして今回は、まず自動詞と他動詞のイメージを伝えるところから。
私「皆さんは、自動詞とはどういうイメージで、他動詞はどういうイメージか分かりますか?というか、自動詞や他動詞に対するイメージを持ってますか?」
学生たち「・・・・・。」
私「はい、よく分かりました。イメージは特に無いってことですね!」
学生たち、苦笑。
そこで、私は他動詞とはこういうもので、自動詞とはこういうものだっていうイメージを具体的な動詞を挙げて絵に描いてみました。
さらに、一番お調子者のベトナム人男子に、「〇〇さんが一番好きな他動詞はなに?」っていう無茶な質問を投げかけてみたところ、
ベトナム人男子「一番好きな他動詞?・・・・・『勉強します』です。」
私「何を勉強しますか?」
ベトナム人男子「日本語です。」
ここで私は、〇〇さんと日本語の関係を絵で板書して、
私「〇〇さんが日本語を勉強した後、何がどうなる?」
学生たち「日本語が上手になります?」
私「(ホンマか?)うん、でもそれは何がどうなった結果、日本語が上手になるんですか?」
学生たち「日本語が〇〇さんの頭に入ります。」(※この文に至るまで色々出てきたんですけど、長くなるから割愛)
私「そうですね。それで、『勉強します』は自動詞ですか?他動詞ですか?」
学生たち「他動詞です。」
私「つまり、他動詞っていうのは『他』という字が使われている通り、他動詞の動作や行動の後で『他から(自分に)』、『(自分が)他に』影響や変化を生じさせるんです。だから他動詞っていうんですよね。」
私「反対に、自動詞っていうのは『自』という字からも分かるように、自分だけで他者は関係なく自己完結します。だから自動詞なんです。」
まず、ここで目から鱗ボロボロ1回目。
あとはさらに、「よく留学生が小論文でやってしまう間違いで、『他動詞を使っているのに目的語が無い』っていうパターンがあるけど、そういう文を読んだり聞いたりした人は、何の話かわからないから、必ず『〜を』の部分を忘れないように!」っていう注意もしました。
次に、よく学生が混同する「意志動詞&無意志動詞」との違いを図示。
何が何の上位概念なのか?また、そこに当てはまる動詞は何なのか?といったところまで説明。
これは以前、勉強会でも取り上げ、その時に私が作った表を使いました。
ここで目から鱗ボロボロ2回目。
今ふと思ったのは、この図に一部空欄を作って、問題としてもう一度考えさせてみるのも面白いかも。
それから、学生から質問があったので、
・〇〇さんは受験する大学を決めました。
・受験する大学が決まりました。
の違いも説明。
そして、ちょっと練習。
次に、他動詞だけ使える用法を提示。
特に、こういうペアになる動詞でよく使われる表現だから、このタイミングで教えることに。
私「例えば皆さんが飲食店のアルバイトで皿を洗っていて、手が滑ってその皿が割れてしまいました。そして、それを店長さんに報告する場合、次の2つの文のどっちを言いますか?」
1 お皿が割れてしまいました。
2 お皿を割ってしまいました。
これには、「1です!」、「2です!」など答えはバラバラ。
私「じゃーこの2つはどういうふうに違うと思う?日本人はどう使い分けてると思う?」
学生「・・・・・(しばし沈思黙考)」
私「じゃー、この2つの文を言われた店長は、それぞれどういう印象を持つと思う?」
学生「あ、1は『私は関係ないです』っていう感じがします。」
私「そう!1の文は、私には責任がありませんよっていうことが言いたい時に使われる言い方です。」
で、2は他動詞であり意志動詞が使われているんだけど、もともとそうしようという意志は無いんだけど、責任は私にありますという時に使う、と説明。
ここで、鱗ボロボロ3回目。
私「みなさん、これからも日本社会で生きていくんだったら、自分が失敗した時のモノの言い方にも気をつけないとね。」
学生「うんうん」
そして、ここで、「今までに私がやってしまった、一番大きい失敗」について書かせました。
パーっと見たんですが、自他動詞以外の問題も孕んでいることに気づいたので、次回は予定を変えてその文法をしようと思ってます。
☆☆☆☆☆☆☆
次に、「中級へ行こう」の2課の文法「〜のでしょうか」。
まあこれは、概念自体は別段難しい文法ではありません。
ただ、気をつけないといけないのが、それを発言してる人の気持ち。
教科書には「疑問に思うことを丁寧に問いかける」という説明があり、それはそれで間違ってはいないと思うんですが、ちょっと足りない部分があるんじゃないかと。
私の分析では、この文法は
1 疑問詞がある文
2 疑問詞が無い文
で、ニュアンスがちょっと変わってくると考えています。
1の疑問詞がある文であれば、教科書の説明だけでいけると思います。
・この場所にはどう行ったらいいのでしょうか。
・この宿題はいつまでに出せばいいのでしょうか。
などです。
ただ、2の場合はどうでしょう?
・田中さんは明日会社に来るのでしょうか。
・彼は第一志望の大学に合格するのでしょうか。
いかがでしょう?
ちょっと1の場合とは違っていると思いませんか?
まだピンと来ないあなたもうちょっと色々な言葉を付け加えた文を読んで、どう感じるでしょうか?
・このまま金融緩和を続けていて、景気が回復するのでしょうか。
・この方法で勉強したら、成績が上がるのでしょうか。
はい、もう分かりましたね?
そうです。「〜のでしょうか」の疑問詞が含まれていない文は、話者がその実現(後件部分)に懐疑的な場合、あるいは多分そうはならないんじゃないの?って思ってるような場合です。
そうなると、外国人留学生を混乱させてしまうのが、「〜のではないでしょうか」の存在。
この形だとスピーチなど、ある程度限定された場面で使われますが、これをさらに「〜のではないだろうか」にすると、途端に使用される場面の範囲が広がります。
特に、読解と小論文。
読解に関しては、日本語能力試験(JLPT)でも留学試験(EJU)どちらにもよく出て来るし、小論文に至っては「〜と思う」一辺倒ではなく表現の幅も広げられ、おまけにこの表現を使うと字数も稼げたりします。
「〜のではないだろうか」っていうのは、「〜のでしょうか」と反対で、「〜」の内容の実現の可能性があると思っている場合。
で、この「〜のではないでしょうか」は前件に「て形接続」は来ないので部分的に若干変えて、上の例に当てはめるとこうなります。
・このまま金融緩和を続ければ、景気が回復するのではないでしょうか。
・この方法で勉強したら、成績が上がるのではないでしょうか。
やっぱり、後件が実現する可能性があると思っている場合の文ですよね?
っていうようなことを説明したとこで、最後の鱗を流してたみたいです。
このクラスはリアクションが非常に素直で分かりやすいので、日本語の新しい知識を得るとホンマにどよめいてくれて、こちらとしても教えがいがあります。
「そうだったんだ!」
「知らなかった!」
「勉強になる〜!」
などと、今まで日本語学校で勉強していたことなどなかったような様子で、平気でこういうことを言います。
特にベトナム人男子の1人は、彼が今まで知らなかったことを私が教えると、目は大きく見開き口もあんぐり開けて驚愕の表情をしてくれます。
週1回はその表情が見られるので、それが楽しみでこのクラスで日本語教えてます。
ただ、こういうクラスで気をつけないといけないのは、定着の度合い。
ただ授業が楽しかった、ってだけで終わらせたくもないんですよね。
なので、
1 アウトプットの練習
2 宿題
3 復習テスト
の組み合わせで、少しでも学生がその文法に触れる機会を増やして、まだ間違っている部分があれば修正してもらいたいなって、思ってます。
それから、この後次回の勉強会の告知のエントリを描きます.
ほな、さいなら!
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