2017年09月20日
私達がやろうとしてる、多分今までどこの日本語学校もやったことがない漢字の授業
今日、私が文法を担当してるクラスのミーティングがありました。
で、このエントリ(→またまた非常勤のベテラン教師のおかげで、漢字の授業の進め方に光が!) にも書いたように、「漢字の教科書に載っている語彙は語彙の授業で行い 、漢字の授業は漢字だけに特化する」ことになりました。
で、今回のミーティングは具体的にどのように授業を展開するかと、それぞれの先生同士の擦り合わせと確認のために行いました。
あ、それからついでに学生の進学関係の進捗状況の説明も行いました。
その辺りはブログで書くとマズいので詳細には書きませんが、ほとんどの学生が「自分は何がしたいのか?」ということがハッキリしてます。
良い傾向。
で、本題の漢字の授業の進め方へ。
私も含めて、このクラスを担当してる先生は全員、漢字の授業のうまい進め方を考えあぐねてました。
決して「漢字マスター N2」という教科書が悪いわけではなく、私達教師の使い方に問題があったというか、「これだ!」っていう使い方が分からないままここまで来てしまったカンジ・・・
特に語彙の部分
これが、N2になってから急に高度になっていて、その語彙の意味や使い方を教えるのにイッパイイッパイになってしまってました。
漢字圏の学生だけならそれでもまだいいんでしょうけど、100%非漢字圏のクラスでそれをやってしまうと、肝心の「漢字そのもの」を教えるのに十分な時間が取れなくなってしまうっていう状況に・・・
急に高度になるっていうのはどういうことかというと、例えば「貨」という漢字の語彙として挙げられている「外貨」。
これ、「外貨預金」であればそのシステムを説明すれば、大体の学生は理解してくれます。
ところが、コロケーションを教えようと思って「外貨を・・・」というのを出してしまうと、「外貨を獲得する」という動詞が出てきます。
この概念って、難しくないですか?
あとは、実際にそこまで教えるかどうかは別にして、「外貨準備高」とかになると学生の理解を超えてしまいます。
そして、今回のミーティングで私たちがやろうとしている、多分今までどこの日本語学校もやったことがない漢字の授業というのが、「具体の世界から抽象の世界へ、学生をジャンプさせる」ような授業。
外貨の例で考えると、「外貨」そのものや「外貨預金」は具体の世界の範疇で、「外貨を獲得する」とか「外貨準備高」は抽象の世界の範疇に存在します。
基本的にこの文法クラスの学生は、今までは目で見えるモノを中心とした「具体の世界」しか知らなかったんです。
そして、N2になると「具体の世界」とのギャップが顕著になってしまってる、っていう状況に彼らは陥ってたわけです。
いわば、具体の世界と抽象の世界の間に川が流れていて、その川を向こう岸の抽象の世界に届くように学生をジャンプさせる必要があります。
そういう授業をしよう!ということで、私たちの意見はまとまりました。
今日は、私以外にA先生(私のブログによく出てきてる、インテリでベテランの先生)とB先生(教授歴は長いけど、ウチの学校には今年度からっていう先生)で話してて、
A先生「そうはいうものの、具体的にどんな授業やったらエエんやろ?」
私「難しいですねぇ〜」
B先生「う〜ん」
一同「・・・・・」
という頼りない私たち。
具体的な方法論は分からずじまい。
ただ、私たちが今まで行ってきた漢字教育からは、パラダイムシフトをしないといけないよねっていう認識は共有できました。
そのためには、今までとは異なる視点で教師が考えないといけない、っていうことに。
その時に出てきた例が、「飲む」という漢字。
一般的な「飲む」だと、
・水を飲む。
・酒を飲む。
・薬を飲む。(←これは、学生の母語によっては「薬を」の次に来る動詞は「食べる」に当たる動詞を使う言語があるので、ちょっとだけ注意が必要。
になり、複合動詞の「飲み込む」とかも
・大きめの錠剤をやっと飲み込んだ。
・クジラが人間を飲み込んだ。
までだと具体の世界ですが、
・彼はやっとコツを飲み込んだ。
だと、抽象の世界になります。
どうしてこうなるのか、っていうことを教師が考えないといけないよね、っていうことで意見がまとまりました。
でもこれってすごく難しくて、今までのようなやり方の方が遥かに楽チンです。
しかし、敢えてこういう思考を入れていこうっていうことになりました。
この辺りて、私たち日本語教師が避けてきたっていうか、考えることから逃げてきた部分なんじゃないですかね?
で、具体的な授業の進め方は、スタートしてから考えればいいと考えてます。
とりあえずスタートしてみて、自分が展開する授業の中で模索しながら気づいていけばなんとかなる的な、楽観的な考えを私は持ってます。
甘いと言われるかもしれませんが、始めてみないことには分かりませんし。
そして、私たちは毎日の漢字の授業では漢字に特化した授業を行いながら、「この部分は語彙の授業で取り上げて欲しい」と思った語彙に関しては、語彙を担当してる先生に引き継ぐ予定。
それとこれに関連して、私の授業で「普段の生活で気になった日本語(漢字語彙)を、学生に発表させる」というのも行おうかと。
その際に、表記されている日本語だったら、それを写メに撮って来るのもOKにします。
因みに、語彙を担当してる先生の考えている到達目標は、「作文や小論文、あるいはスピーチで、習った語彙を使えている」ことだそうです。
☆☆☆☆☆☆☆
こういう視点での漢字の授業って、多分今までどこの日本語学校でもやってこなかったんじゃないかと思います。
今の段階では、こういう授業がどうなるかっていうのは分かりませんが、成功事例になれば他の学校の先生のお役にも立てるんじゃないかな?と、希望的観測をしているところです。
とりあえず、私が前々から読もうと思っていたこちらの本を購入しました。
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kindle版
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具体と抽象 世界が変わって見える知性のしくみ [ 細谷功 ]
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具体と抽象世界が変わって見える知性のしくみ【電子書籍】[ 細谷 功 ]
留学生への日本語の授業にどれだけ役立てられるかは分かりませんが、読んでみて有益だったらまたブログで紹介します。
あと、漢字や語彙以外にも私では思いつかないような授業のアイデアも出たので、明日はそれについて書こうと思ってます。
ほな、さいなら!
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で、このエントリ(→またまた非常勤のベテラン教師のおかげで、漢字の授業の進め方に光が!) にも書いたように、「漢字の教科書に載っている語彙は語彙の授業で行い 、漢字の授業は漢字だけに特化する」ことになりました。
で、今回のミーティングは具体的にどのように授業を展開するかと、それぞれの先生同士の擦り合わせと確認のために行いました。
あ、それからついでに学生の進学関係の進捗状況の説明も行いました。
その辺りはブログで書くとマズいので詳細には書きませんが、ほとんどの学生が「自分は何がしたいのか?」ということがハッキリしてます。
良い傾向。
で、本題の漢字の授業の進め方へ。
私も含めて、このクラスを担当してる先生は全員、漢字の授業のうまい進め方を考えあぐねてました。
決して「漢字マスター N2」という教科書が悪いわけではなく、私達教師の使い方に問題があったというか、「これだ!」っていう使い方が分からないままここまで来てしまったカンジ・・・
特に語彙の部分
これが、N2になってから急に高度になっていて、その語彙の意味や使い方を教えるのにイッパイイッパイになってしまってました。
漢字圏の学生だけならそれでもまだいいんでしょうけど、100%非漢字圏のクラスでそれをやってしまうと、肝心の「漢字そのもの」を教えるのに十分な時間が取れなくなってしまうっていう状況に・・・
急に高度になるっていうのはどういうことかというと、例えば「貨」という漢字の語彙として挙げられている「外貨」。
これ、「外貨預金」であればそのシステムを説明すれば、大体の学生は理解してくれます。
ところが、コロケーションを教えようと思って「外貨を・・・」というのを出してしまうと、「外貨を獲得する」という動詞が出てきます。
この概念って、難しくないですか?
あとは、実際にそこまで教えるかどうかは別にして、「外貨準備高」とかになると学生の理解を超えてしまいます。
そして、今回のミーティングで私たちがやろうとしている、多分今までどこの日本語学校もやったことがない漢字の授業というのが、「具体の世界から抽象の世界へ、学生をジャンプさせる」ような授業。
外貨の例で考えると、「外貨」そのものや「外貨預金」は具体の世界の範疇で、「外貨を獲得する」とか「外貨準備高」は抽象の世界の範疇に存在します。
基本的にこの文法クラスの学生は、今までは目で見えるモノを中心とした「具体の世界」しか知らなかったんです。
そして、N2になると「具体の世界」とのギャップが顕著になってしまってる、っていう状況に彼らは陥ってたわけです。
いわば、具体の世界と抽象の世界の間に川が流れていて、その川を向こう岸の抽象の世界に届くように学生をジャンプさせる必要があります。
そういう授業をしよう!ということで、私たちの意見はまとまりました。
今日は、私以外にA先生(私のブログによく出てきてる、インテリでベテランの先生)とB先生(教授歴は長いけど、ウチの学校には今年度からっていう先生)で話してて、
A先生「そうはいうものの、具体的にどんな授業やったらエエんやろ?」
私「難しいですねぇ〜」
B先生「う〜ん」
一同「・・・・・」
という頼りない私たち。
具体的な方法論は分からずじまい。
ただ、私たちが今まで行ってきた漢字教育からは、パラダイムシフトをしないといけないよねっていう認識は共有できました。
そのためには、今までとは異なる視点で教師が考えないといけない、っていうことに。
その時に出てきた例が、「飲む」という漢字。
一般的な「飲む」だと、
・水を飲む。
・酒を飲む。
・薬を飲む。(←これは、学生の母語によっては「薬を」の次に来る動詞は「食べる」に当たる動詞を使う言語があるので、ちょっとだけ注意が必要。
になり、複合動詞の「飲み込む」とかも
・大きめの錠剤をやっと飲み込んだ。
・クジラが人間を飲み込んだ。
までだと具体の世界ですが、
・彼はやっとコツを飲み込んだ。
だと、抽象の世界になります。
どうしてこうなるのか、っていうことを教師が考えないといけないよね、っていうことで意見がまとまりました。
でもこれってすごく難しくて、今までのようなやり方の方が遥かに楽チンです。
しかし、敢えてこういう思考を入れていこうっていうことになりました。
この辺りて、私たち日本語教師が避けてきたっていうか、考えることから逃げてきた部分なんじゃないですかね?
で、具体的な授業の進め方は、スタートしてから考えればいいと考えてます。
とりあえずスタートしてみて、自分が展開する授業の中で模索しながら気づいていけばなんとかなる的な、楽観的な考えを私は持ってます。
甘いと言われるかもしれませんが、始めてみないことには分かりませんし。
そして、私たちは毎日の漢字の授業では漢字に特化した授業を行いながら、「この部分は語彙の授業で取り上げて欲しい」と思った語彙に関しては、語彙を担当してる先生に引き継ぐ予定。
それとこれに関連して、私の授業で「普段の生活で気になった日本語(漢字語彙)を、学生に発表させる」というのも行おうかと。
その際に、表記されている日本語だったら、それを写メに撮って来るのもOKにします。
因みに、語彙を担当してる先生の考えている到達目標は、「作文や小論文、あるいはスピーチで、習った語彙を使えている」ことだそうです。
☆☆☆☆☆☆☆
こういう視点での漢字の授業って、多分今までどこの日本語学校でもやってこなかったんじゃないかと思います。
今の段階では、こういう授業がどうなるかっていうのは分かりませんが、成功事例になれば他の学校の先生のお役にも立てるんじゃないかな?と、希望的観測をしているところです。
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留学生への日本語の授業にどれだけ役立てられるかは分かりませんが、読んでみて有益だったらまたブログで紹介します。
あと、漢字や語彙以外にも私では思いつかないような授業のアイデアも出たので、明日はそれについて書こうと思ってます。
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