今年度の授業終了2週間前に文法クラスで敢えて行う新しい試み②「漢字実力テスト」 そろそろ顕著になってきた、日本語教材の設定と留学生が身を置く社会との乖離

2018年02月12日

私にとって雲の上の存在の、その学校の2トップのベテラン教師の共通点

日本語教師の方に質問!

あなたにとって「雲の上の存在」とも言える、ものすごい先生っていますか?

私が初めて日本語教師として働いた学校は、その時に学生数がかなり増えたため、その学期にかなり多くの日本語教師が採用され私もその一人でした。

その学校はその時まで「教授経験が無い教師」を採用しておらず、私が採用された学期に初めて未経験者を採用することになったそうです。

なので、同期は結構な人数がいたのですが、2、3人を除いてほぼ全員が素人。

という事情があり、未経験者の新人教師に対して研修が行われることになり、その研修を担当されたのがタイトルの2トップのお一人である A 先生。


もちろん私もこの研修を受け、その経験は今の akky の土台になっています。

この経験、ちょっと今ではどうやっても得られないほど貴重なものだったと、時がたてばたつほどそう思うようになりました。


もうお一人の B 先生なんですが、私が採用されてなぜか半年で専任という立場になり、その B 先生の配属された中級のレベル担当になってしまいました。

当時はその学校、学内で色々とゴタゴタがあり、とある誤解からその先生の私に対する風当たりが相当きつく、「ヒエ〜、コワい・・・」ってビビってました。

すぐにその誤解は解けたので、それ以来は特に波風もなくまあ良好な関係で今に至ります。


このお二人は、日本で日本語教育の黎明期の草分け的な存在で、相当の大先輩にあたります。


お二人は、色々と対照的だったりするんですが、共通点も多い。

まず、対照的な部分から説明すると、A 先生はオーラがあってなかなか近づき難いのに対して、 B 先生には中堅くらいのキャリアの教師の崇拝者が多かったです。


また、教材の捉え方についても結構違っていて、例えば「日本語初歩」という当時使っていた初級教材に対して、 A 先生は「良い教材だと思うけど、教師を選ぶ難しい教材だから、そろそろ現状にマッチしなくなってる」といった捉え方で、 B 先生から日本語初歩に対する評価を聞いたことは私は無いんですが、「教材そのものの、構成や内容などを評価していた」と聞いてます。


私は当時専任で「オブザーブ」と呼ばれる授業見学という業務があり、幸運にもお二人の授業を見せてもらったことがあります。

A 先生はものすごい求心力でどんどん学生を巻き込んでいく一方、B 先生は一見淡々と授業しているように見えるのですが、Q の振りが絶妙でいつのまにか学生が自然に今教わってる文型で話してる、といった授業。

(因みに、最後にオブザーブで A 先生の授業を見せてもらった時に、私にはわからなかったのですが先生がちょっとしたミスをなさったみたいで、「 akky 先生がいたから緊張したんです。」とおっしゃってましたけど・・・多分違う)


このように一見対照的な部分が際立つ2トップの先生なんですが、共通点も色々とあります。


☆☆☆☆☆☆☆


1 持論を持っている


これはこのお二人に限らず、ウチの先輩ベテラン教師もそうなんですが、ある文法/文型の解釈が先生によって違っていて、それはつまり持論を持ってるってこと。

これを読んでる日本語教師のあなた、持論ありますか?

あまり教師経験が長くない先生は持ってないことが多いと思うんですが、ある程度の教授経験があるのに持論を持ってない先生もチラホラいるようです。


また、文法や文型の分析だけでなく、「どこまでを許容するのか?」というところにも、持論が深く関わってきます。


私は特に今いる学校に来て、この持論を持つって大事だなと感じることが多いです。

大事だと考える理由は、それがブレない「判断の基準」になり得るから。

今の学校って、学生にアウトプットさせたものが正用か誤用かを、その場でその都度専任と非常勤が話し合って決めめて、「それでいいの?」と思うことが多いです。

そういう決め方って、一貫性が担保できないのでは?

例えば、5年前に「誤用」と決めたことが今では「正用」って判断されるってことも、出てこないとも限らないんじゃない?


2 基礎的な教養レベルが高い


教養で考えると、私とはスタートラインが違うっていうか、土台部分の高さが全然違うと感じます。

このお二人と話していると、「私って、相当無知だなぁ・・・モノを知らないなぁ・・・」と思い知らされます。

時々私は、B 先生、ウチの先輩ベテラン教師と3人でご飯を食べに行ったりするんですが、B 先生と先輩ベテラン教師の話に出てくる日本語が分かんなかったりしますモン。

知らない言葉だから後で調べることもできず、未だにその言葉が何でどういう意味なのかは闇の中です。

さらに、日本語以外の教養もおありになるため、時々雑談で近代史の話になったりした時には、全くついていけません。


そしてそれでいて B 先生は当時だったら攻殻機動隊、新世紀ヱヴァンゲリヲン、機動戦士ガンダム(どのシリーズかは分かりませんが)などを網羅的に視聴されてたようです。


3 超ロジカル


ロジックもすごいです。

私は元々論理的な人間ではなく感覚的な人間なので、ロジックに弱いです。

だから、どちらかの先生と話してると「どういうロジックでそういう結論になるの?」が分かんなかったりして、説明に説明を重ねていただいてやっと理解できる、ってことが何度かありました。

「どう考えてもそうなるでしょ?」って言われても、akky は「どう考えればそうなるのか分かりません。」っていう状況になってるっていう。


4 その教師のキャリアに関係なく、質問に真摯に向き合う


こういう先生って、色んな先生から日本語について質問される機会が多いんですが、質問者である教師のキャリアなどに関係なく真摯に考えてくれます。

当時その学校には圧倒的にベテランが多く、私が A 先生に質問に行ったら B 先生や他のベテラン教師もワラワラと集まり、色んな先生が色んな意見を言ってくれたりしました。

その結果、私は色んな意見を聞きすぎてどれにしたらいいのか分からず、途方に暮れるんですけど。


で、私はちょっと一般的な日本語教師とは違う部分に疑問を持つらしく、私がどちらかの先生に質問しに行くと割と面白いと思ってもらえてたっぽいです。


でも最後の方は、B 先生のところに質問に行きかけると、「 akky 先生、また難しい質問に来るの?」とか言われてましたけど。


5 初級を教えるのが最も難しいという意見


A 先生も B 先生も、「日本語教育で最も教えるのが難しいレベルは、初級である」という意見で、ここは一致してます。

特に当時も「みんなの日本語」ではなく「日本語初歩」だったってことも、大きく影響していたとは思います。


B 先生の言葉で印象的だったのは、「私が初級を教えたいのは、語学学習では基本的に初級を独学でマスターするのは不可能だから。」です。


最近、Facebook とかで独学で日本語を学んでる人がいますけど、大半の学習者の日本語は問題がある、という印象を私は持っています。


6 文法/文型分析は0ベースで考える


私はだいぶ前に、中級レベルで「中級日本語」という教材の中に出てきた「い形容詞 → 動詞」っていう文法を担当したことがあります。

これはどういうものかというと、

  • 広い → 広まる、広める / 広がる、広げる
  • 狭い → 狭まる、狭める(← これに関して書くと、動詞と形容詞で漢字の読みが違う!)
  • 高い → 高まる、高める

といったようなものです。

あなたがこういう文法を教えると仮定したら、まず何を考えますか?

「広まる」と「広がる」の違いでしょうか?

自他動詞の違いを再び確認する意義でしょうか?


B 先生は、「高くなる」ではなく、なぜ「高まる」という語彙をわざわざ使うのか?、という0ベース思考の視点で考えてはりました。

これはつまり、「高くなる」と「高まる」がどう違うのか、という視点ですよね?


あんまりこういう視点で考えてる日本語教師はいないように思うんですが、どうですかね?

なんとなく、ルールだけ教えて練習させてる教師が多いような・・・


私が今までオブザーブをさせてもらった中で、「い形容詞 + なる/する」ではなく、動詞にするのかを説明する教師は少なかったです。


☆☆☆☆☆☆☆


今ではこのお二人は、日本語を学校では教えてません。


B 先生は、キッパリ日本語教育からは引退なさって、今はお孫さんに夢中です。

ただ、B 先生らしいのが、「やっぱり動詞から覚えるのね〜」などと、分析してはるところ。


一方、A 先生はボランティアで教えてらっしゃいます。

以前、こんなエントリ(→経済学的に考えて日本語教師の給料が低いのはその程度の付加価値しか生み出してないからだよね)を書きましたが、ボランティア日本語教師が日本語教師全体の待遇を下げていると主張される先生で、この先生以上の付加価値を提供できる方はどれくらいいるのだろう?と思わずにはいられません。


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