将来、日本語教育でオーダーメイド授業がクラスの一斉授業より学習者にとって有益になっていく2つの理由私が日本語学習者に過度な忖度をしない理由

2020年01月15日

akkyが中級以上の文型分析をする時の思考のとっかかりを「〜える(うる)」を例にご紹介

私が日本語教師になったばかりで中級以上のクラスを担当した時って、初級レベルの文法書などはまあまあありましたが、中級以上になるとそういうのが限られていたので、当時結構困りました。

今は中級以上のものも増えてきていますが、私は個人的にもう一歩踏み込んでないなって印象の書籍が多く、現在中級以上のクラスを担当されて困ってる先生のお役に立てればいいなと思い、今回エントリを書きます。


☆☆☆☆☆☆☆


まず、中級以上の文型を教えている先生がまず考えるのは、

同じ意味の初級文法/文型と何がどう違うのか? 

だと推察されます。

私も以前はこういう思考をしていました。

でもそう考えていってしまうと、弊害が1つ。

  1. 省エネを是とする学習者だと、その文型を使うインセンティブが働きにくい

です。 

1に関しては、教師が「基本的には初級文法/文型と同じですけど・・・」的な説明から始めた場合、特に「大体意図が伝わればいい」って考えている省エネの学習者は「じゃー初級文法/文型でアウトプットすればいいや」って考えがちになります。

そうすると、何としてでも覚えて使えるようになろう、って思考にはなりません。

あなたのクラスにもいませんか?中級以上の文型を教えても教えても、会話や作文は初級ばっかりの学習者。


なので、私が最近中級以上の文型分析をする時のとっかかりは、

その中級文型と初級文型は、意味領域が同じかどうか

です。


もっと踏み込んで書くと、

その中級文型に、同じ意味の初級文型では表現しきれない部分は無いか

です。

このことは、初級文型と何がどう違うかってこととは違っています。

漫然と初級との違いを説明しても、「細かい違いを説明されてもよく分かんない」って思う学習者は結構いそう。

でも、先ほどのインセンティブの話になりますが、「この文型はこの場合、同じ意味の初級文法/文型では言い換えられないので、このことが表現したければ覚えるしかないよね?」って持っていけます。

 
ここで1つ例を挙げます。

中級文型の「〜える(うる)」です。初級で同じ意味と言っていいのは「可能形」でしょうか。

ここでの思考のとっかかりは、先ほども書いたように「可能形」では不可能だけど「〜える(うる)」であれば表現できる日本語は何か?です。

これ読んでる日本語教師の方、ちょっと考えてみてください。あんま難しくないと思います。 

そうです!

ありえる(うる)

です。 

この概念、可能形で表現しようと思っても無理なんです。

無理くり「ある」を可能形にしようとして「あれる」みたいな言葉を作っても、そんな言葉日本語にはありませんよね?


こう考えると、「〜える(うる)」にあって可能形に無い働きというのは、

一部の無意志動詞に可能の意味を付加できる

ってことじゃないかと。


あと、ここまで書いてきてふと思ったのが、まあ一般の日本語学校はここまで教えないと思いますが、一応日本語として存在する「〜える(うる)」のバリエーションとして、「〜たりえる(うる)」があります。

・王が王たりえるゆえんは・・・。

的な文で使われます。

これ、「〜たり」ではなく「〜である」を使うと、

・王が王でありえるゆえんは・・・。

となり、私的にはかなりニュアンスが変わるかなと感じます。


「〜たる」は古い日本語で現在は日常的には使われていませんが、意外とアニメに出てきそう。

「王」の部分を「武士」とか「侍」に変えれば、戦国BASARAとかの時代もののアニメで使われてそう。

まあ、それは置いといて・・・


☆☆☆☆☆☆☆


今まで、中級以上の文系の分析で同じ意味の初級文法/文型との違いしか考えて来ず、それであまりうまくいっていない先生がいらっしゃったら、今回私が説明した分析をちょっとやってみてはいかがでしょう?

全ての中級以上の文型がこれで分析できるとも思いませんが、やってみたら今までとは違った日本語の世界が見えてくるかも。


ほな、さいなら!


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akky_san at 20:30│Comments(0)日本語教師 | 思考の方法

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