企業

2019年09月10日

企業がCSRの一環として日本語研修を導入することで得られるメリット2つ

いきなりですが、CSRって聞いたことありますか?

CSRというのは、Corporate Social Responsibility の略で、日本語では「企業の社会的責任」と訳されることが多い概念です。

企業は利益を追求するのが当然ですが、それだけでなく事業活動を通して社会に貢献する責任も重要だよね、って考え方です。

具体的に書くと、森林再生やリサイクルなど環境保護、働きやすい職場環境づくり、人材育成、地域コミュニティとの交流のようなこと。

特にこのエントリの文脈で書くと、職場環境づくりや人材育成が関係してきます。


で、このCSRという考え方は、日本企業の外国人社員や従業員に適切な日本語教育を受けさせることにも該当するんじゃないか、というのが私の意見です。

なんとなく、今までの日本語教育界隈では日本語教師を採用したらしっぱなしであるなど、「人を育てる」ってことがなおざりにされてきているように感じています。

そしてそのことは、日本企業に採用された外国人についても言えるように思います。

なぜなら、私が今実際に面と向かって教えている学習者さんの様子を見るにつけ、「多分、今まであんまり日本人社員さんとコミュニケーションを取るのは難しかったんだろうな」と思わされることが多かったから。

よほど英語ができる日本人社員さんでないと、彼らと日本語で意思疎通をするのは難しそう、といった印象を受けました。


私が教えている学習者さんが所属している企業は、日本人ならほとんどの人が社名は知っているくらい大きい企業です。

だからというわけでもないんでしょうが、こちらの企業の外国人従業員に対する考え方は非常に的を射ており、その結果プロである日本語教師に彼らへの日本語研修を依頼したということ。

おそらく現在の日本企業の何割かは、「日本人なら基本日本語は教えられるから、日本人社員に外国人従業への日本語レッスンをやってもらおう」くらいに考えている所がありそうです。

確かに、短期的なコストを考えたら合理的な選択ではありますが、結果的に成果が出せるのかは大いに疑問。


ところが、きちんとした日本語研修を導入し外国人社員にそれを受けてもらうことで得ることができる、大きなメリットが2つあるので、今回はそれについて書きます。


☆☆☆☆☆☆☆


1 致命的なイメージダウンを未然に防ぐ

ここ最近、日本企業の「外国人労働者の搾取」のニュースは枚挙にいとまがありません。

例えばこちらの今治タオルの件など、まだ記憶に新しいという人も多いのでは?



私は昨今の企業の不祥事のSNSの拡散のスピードの速さと拡大の範囲の広さが凄いなって思っていて、特に

  1. ジェンダーやセクシャリティ
  2. 人種、民族関連
  3. 労働搾取

がトピックとしてのメインストリームだと感じています。 

そして、その波及効果も全く予想できないくらい大きなものになる可能性を孕んでいます。


で、企業の外国人労働者の労働環境がSNSなどで一度「ブラック認定」されて拡散されてしまうと、それを止めるのはほぼ不可能です。

さらに、拡散後に後手後手に回ってしまったり、言い訳じみた弁解などのように組織防衛に走ってしまうと、もう目も当てられない状況に。


長年築いてきた顧客の信頼も、すべて水の泡になります。


ところが、外国人に企業が責任をもって日本語研修を提供すれば、日本語がわからないことによる外国人社員のストレスの軽減につながるし、コミュニケーション障害も軽減できる可能性が高まります。

さらに日本語ができるようになれば、職場での人間関係やコミュケーションが円滑になるばかりか、会社外での日本語によるコミュニケーションの幅も広がるため、外国人社員さんのQOL(Quality Of Life)の向上も期待できます。

外国人を搾取する対象としてしか見ないブラック企業とは180度異なり、日本人と同様に外国人社員を遇し彼らも含めて社員を大切にするという姿勢を、日本語研修を導入することによって対外的に示すことさえできます。


2 業務の生産性向上

これ、結構その企業の収益に直結してるんじゃないかと思うんですよね。

日本人社員と外国人社員との意思疎通が上手くいかない場合、かなりの機会損失が発生してると考えられるからです。

意思疎通が円滑にできていれば発生しなかったであろう時間のロスが、円滑にできなかった場合に発生しているんです。

これ、時間超勿体無いです!


日本企業って割と、特にホワイトカラーの職種は生産性の意識が希薄で、「とりあえず終わるまでやる」とか「特定の成果を想定してなくても、とにかく手や足を動かす」、「情報の共有のためだけに、特定の時間を会議に充てる」とかしてしまいがちです。

その結果、労働時間が伸びてしまい、会社全体の生産性が相対的に下がっているわけです。


そうではなく、「限られた時間の中で、いかに成果をあげられるか」というふうに意識改革をすると、当然「外国人社員とのなかなか上手くいかないコミュニケーションの時間」ももったいないと感じられるはずです。

そして、その時間を省くためにも企業側がきちんとした日本語研修を彼らに提供することが、非常に有効になってきます。


もうね、日本人同士でも自分の発話意図が相手に正確に伝わらず、勘違いさせてしまったり気分を害してしまったりするんだから、やはり外国人社員には日本語教師による日本語研修をするべきなんじゃないかと考えています。


☆☆☆☆☆☆☆


というわけで、意識高い経営方針の外国人従業員の割合が増えてきている企業は、 CSRの一環として彼らに日本語研修を提供したほうがいいですよ、ってお話。

そのほうが、短期的に見るとコストが高く見えても、長期的に見れば日本語研修を行わないことで発生するコストを抑えられるので、結局コストは抑えられます。


また、そういう企業が増えれば、日本語教師にとっても日本語学校以外の職場の選択肢や多様な働き方が増え、良いことずくめ。

私は、日本語学校の待遇を批判するのもいいとは思うんですけど、企業に日本語教育のインセンティブを気づかせて違う形の雇用を創出するように持っていくのも有効なんじゃないかと考えています。


ほな、さいなら!


日本語ランキング 

このエントリーをはてなブックマークに追加
akky_san at 17:46|PermalinkComments(0)