板書

2016年04月22日

栗田正行著「わかる板書伝わる話し方」 あなたの話し方で伝わってますか?

昨日に引き続き、栗田正行著「わかる板書伝わる話し方」について書きます。

板書についてもそうですけど、話し方に関しても意識したり重視している日本語教師は少ないように思います。

かと思えば、ジェスチャーたっぷりで声もかなりトーンが高い、あたかも「キャラを演じる」くらいのパフォーマンスで授業を行う方もいはります。

なんか、かなり両極端な気がします。

私は、後者のような先生の授業を見ると、個人的にはちょっとこちらが気恥ずかしくなってしまいます・・・


この間くらいのがバランスが取れてるんでしょうね~


それくらいの話し方をするのに、この本の後半部分である「伝わる話し方」が勉強になりました。

以前書いたこちらのエントリ → 日本語教師のためのプレゼン・スピーチ入門を受講してきた とカブる部分もあるかもしれませんが、私が「なるほど!」と感じた部分を中心に紹介していきます。


☆☆☆☆☆☆☆


1 表情を使い分ける

自分がその時にどんな表情をしているかについて、意識している日本語教師はあんまりいないと思います。

といっても、日本語教師は俳優ではないので、様々な表情を繰り出す必要はありません。

著者によると、「今は楽しくはなしていても大丈夫だな」とか「あ、今は先生は怒ってるな」っていうことを学生が把握しやすい先生になるのが大切だということです。

いつも怒ってばっかりの表情だと学生は発話しなくなるし、逆にいつも笑顔だと「この先生は何やっても怒らないんだ」ってカンジでナメられます。

一度、いつもニコニコしてる若くてかわいらしい先生に、韓国人女子が

「先生はいつもニコニコしててかわいいですね!でも、その笑顔がウソっぽいですね

って言ってるのを偶然聞いたことがあります

結構見透かされてます。


あと、私は自分で感情があんまり顔に出ないタイプだと思っていたんですが、初級で教えたクラスの学生何人かがいるクラスを上級でも担当することになり、学生がザワザワして私が「うるさいな」って思ってると、自然に静かになるっていう現象が何回かありました。

で、何でだろ?と思って注意深く見ていると、初級で教えた女子学生が騒いでいる学生に注意をしてくれてました。

後で聞くと、

「先生とは付き合いが長いから、先生が怒ってる時はすぐ分かります」

って言われました。

つまり、学生はこちらが思っている以上に教師の表情を見てるってことです。

それに、表情を使い分けられれば授業にメリハリも生まれ、クラスの雰囲気作りにも役立ちます。


2 学生の顔と名前をすぐに覚える

私がベテランの先生の研修を受けていたときに言われたことの一つが、「最初の授業で学生の顔と名前を全部覚えて下さい」というものでした。

なので、それ以来私はずっとそのことを心がけています。

ただ、さすがに4クラス(60人)を同時に担当した時は無理でしたけど・・・


あと、一度業務で授業見学をさせてもらった時に、その授業を担当していた先生が

「はい、じゃー次はあなた読んで。はい。じゃー続きは隣のあなた」

っていう指名のしかたをしていてビックリしたことがあります。

名前覚える気ゼロ?って思いました。


3 叱るときは学生の人格ではなく行為を叱る

時々、「あの学生はアカン!」みたいなカンジで、学生の人格自体を否定するようなコメントを教務室で聞いたりすることがあります。

特に前の学校ではよく聞きました。

教務室で言ってるだけならまだイイんですが、同じ調子で学生にも直接そのようなことを言ってたりすると問題です。

この本にも書かれているように、叱るときの3原則は「きびしく・短く・後をひかず」っていうことが大事なんだろうと思います。


4 話の途中に間を空ける

時々、ズーッと一本調子で立て板に水みたいな説明のしかたをする先生がいます。

でも、そういう話し方だとメリハリが生まれませんし、内容が学生の記憶に残りにくいです。


でも、間を空けると

1 ザワついている学生を静かにさせる

2 次にどんな発言をするんだろう?などと学生に期待感を持たせられる

といったような効果をもたらします。


5 間違ってもイイという雰囲気を作る

これは、私も痛切に感じていることです。

私がずっと日本語教師を続けてきてヒシヒシと感じることは、「アジア系の学生は『正解を答える』ということに執着する」っていうこと。

そのせいで、

・正解を答えるために他の学生に聞く、あるいは他の学生の答を見る

・正解だという自信が無いと、黙り込む

・正解に辿り着くプロセスを軽視して、自分の答が正解か不正解かだけにしか興味が無い


っていう傾向があるように感じます。

そうではなく、間違えて当たり前なんだよ!っていうことを分かってもらう必要があると考えています。

私もそうなるように努力してるつもりなんですが、長い間刷り込まれてきたものを覆すのは至難の業です・・・


誰かいい方法ご存じないですか?


☆☆☆☆☆☆☆


他にも色々と勉強になることが沢山掲載されています。

私もこういうことを肝に銘じて授業に臨んでいきたいと考えてます。


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栗田 正行
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2016年04月21日

栗田正行著「わかる板書伝わる話し方」 板書まで含めて授業を組み立ててますか?

栗田正行著「わかる板書伝わる話し方」も日本語教育以外の、授業のテクニックに関する本です。

前にもこんな板書関係の本に関するエントリを書きました。 → 八巻修著「参加型板書 システム&アイデア」 学生の授業への参加度を高める一つの効果的な方法


私の個人的な見解なんですが、日本語教師って板書を蔑ろにしてるっていうか、あんまり重視していない人が多いような気がします。

模擬授業や授業見学などでも、ちょっと「エッ?」って思うことがあります。

何でそれを板書するの?

とか

何でこれは板書しないの?

って感じることがあります。

かくいう私も、そこまで毎回毎回緻密に板書をしているわけではありません。

ただ、文法などは後でノートを見たら内容が一目瞭然になっていて、復習しやすい板書を心がけていますし、総合や小論文などでは、学生の意見やそのテーマの各要因の関係性が私の当初の計画通りに完成されるように板書を考えたりはします。

でも、十分だとは言えませんし、漢字や語彙に関しては結構適当に書き殴ってるだけだったりします。


今回この「わかる板書伝わる話し方」を読んで、特に板書の部分では「頭では分かってるんだけど、なかなか実践できていないこと」がたくさん出てきたので、今回エントリに書こうと思いました。

なので、「伝わる話し方」の部分については別エントリで書きます。


☆☆☆☆☆☆☆


1 矢印だけでも4つの効果がある

著者は、「授業参加者の認識を揃えることが板書の目的の一つ」であり、それを「明瞭の効果」と呼んでいます。

そして、その具体例の一つに矢印を挙げています。

その効果は4つあり、

①時間の関係を表す

②因果関係を表す

③順序関係を表す

④位置関係を表す

としています。

初級の文法説明であれば、①は「テンス・アスペクト」、②は「~て・~ので・~から」、③は「~前に・~後で・~てから」、④は位置関係と書いてありますが、図やイラストを描いた時に該当場所を指すということなので、語彙の授業に使えそうです。

ここで気をつけないといけないのは、矢印にも色んな種類があって(例えば、→、⇒、⇔など)それを使い分ける場合、ルールを統一しておくということ

その時の気分で使い分けてはいけないってことですね。


2 色使いに注意する

皆さんは、黒板にしろホワイトボードにしろ、色を使い分けていますか?

使い分けている場合、使い分けに統一されたルールはありますか?

また、何色をどういう目的で使っていますか?


ところで、ここでちょっと質問なんですが、黒板の場合最も目立つ色は何色だと思いますか?

黒板にチョークで板書する場合、目立つ順に並べると、

1位 黄色
2位 白色
3位 赤色

だそうです。

因みに、ホワイトボードの場合は

1位 赤色
2位 青色
3位 黒色

です。

これを知っておけば色々活用できそうです。

私は今、小論文のクラスは黒板で文法のクラスはホワイトボードなので、その授業によって色を使い分けようと思っています。


3 板書でスペースを取るのも有効

私の小学校の先生もよく仰ってましたが、

「後で書き加えることがあるから、2行空けておいて」

っていうのを前もって言っておくと、後で学生が消しゴムで消すっていう手間が省けます。

そしてこのことは、とりもなおさず予め教師が板書を計画的に考えていることを示しますし、学生にも配慮しているっていうことが伝わります。


4 自分の板書を教室の後方から確認してみる

皆さんは、多少長い文でもまっすぐに板書できますか?

私は途中から徐々に上に行ったり下に行ったりすることがあります。

それはなぜかというと、ずっと板書してる場所からしか見ていないから。

なので、自分の板書のクセを知るためにも、さりげなく教室の後のほうへ行って、距離を置いた状態で自分の板書を見てみることを著者は勧めています。

さらに、全体のバランスや一つ一つの文字の大きさなどもチェックできます。


5 細かい配慮も欠かさない

これは私もよくしているんですが、学生がノートを取っていて大体終わったかな?っていうタイミングで、

「消してもいいですか?」

って聞きます。

几帳面な学生は、ノートの字をきれいに書こうとしたりきれいにまとめようとするため、ノートを取るのに時間がかかったりします。

そういう学生は、教師が何も聞かずに突然板書を消してしまったら、愕然とするでしょうね。

なので、そういう学生のためにも細かすぎると思う人もいるかもしれませんが、配慮をしてあげたほうがイイということですよね。


6 そもそも学生はどういう板書をのぞんでいるのか

ここでは中学生へのアンケートで、どういう板書を望んでいるのかっていう結果が出ています。

①続け字、大きさ

②位置

③色

④濃さ

⑤消し方

⑥まとめ方

⑦順序

⑧速さ

だそうです。

詳しいことは、この本を読んでいただければと思います。


7 黒板(ホワイトボード)を分割して板書する

私は、黒板全体を表として使うことはあるんですが、分割して板書するっていう発想はありませんでした。

この本には目的によって、いくつにどう分割するかっていう具体例が書いてあります。


☆☆☆☆☆☆☆


いや~勉強になりました

すぐに全部を自分の授業に取り入れるのはなかなか難しいとは思いますが、徐々に学生の様子を見ながら取り入れやすそうなものから使ってみようと思います。


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2016年04月13日

八巻修著「参加型板書 システム&アイデア」 学生の授業への参加度を高める一つの効果的な方法

八巻修著「国語授業がアクティブに変わる!参加型板書 システム&アイデア」はずっと読みたかった本で、先日やっと読むことができ、その内容を私のブログを読んでくれてる人にも共有したかったので、エントリに書きます。





いや~目からウロコな内容が、かなりありました。

振り返ってみると、私は自分が板書するだけじゃなくて、学生にも板書させてたりはしてました。

ただ、それってパターンが決まってて、聴解でディクテーションしたときに学生が書いた答とか、文法で学生が作った例文とかを板書させてただけでした。


でも、この本を読んで、そういうことだけにとどまらずもっと色んなことで板書させることができるし、その方が授業時間を効率的に使えるんだなってことに気づきました。

さらに、この本は私に、学生に板書させたほうが学生の授業への参加度が高まりそう、と思わせてくれました。

また、私が模擬授業をみせてもらったりアドバイスを求められたりしたときに、日本語以外で一番よく出てくるのが、この「板書」です。

結構潜在的には「板書」で悩んでいる先生も多いのではないかと思います。


なので、今回のエントリでは、この本の概要と私の思ったポイントをミックスして書いていこうと思います。

私の主観がミックスされているので、この本の各章の番号やタイトルとは違っている部分があります。

あくまで、この本にできるだけ忠実な「私の読書メモ」くらいに思っておいてください。


☆☆☆☆☆☆☆


「参加型板書  システム&アイデア」



1 発想やアイデアを考える時の板書の流れと、その時間の使い方


①課題を出す


②全員ノートに考えたものを書く


③できた人から板書する


 まだできていない人は引き続きノートに書く


 考え付かない人は板書されたものからヒントを得る OR その中から選ぶ



その結果、時間を持て余してスマホを触ったり、私語をする学生が減る



④自分が書いたものについて、自席で発表する(ただし、単純な列挙などではなく内容がある場合)


⑤板書された以外のものはないか、また、板書された内容について検討する



2 各項目のポイント



どんな課題が向いているか


・自分の考えを文章で書く

・答えが複数あるもの

・比べることで考えが深まり、気づきが得られるもの



・理由を書く場合、「なぜなら~からだ」で書かせる

・複数の場合は箇条書き

・できるだけたくさん



・板書をした学生の名前も書かせる


これは、見た人は誰が書いたかすぐに分かり、板書する学生も無責任だったりいい加減だったりする答を書かなくなるから



3 具体的な授業例


・学生による漢字のレクチャー

・説明文を読み、その場で問題を作ってそれを板書し、みんなで共有して解く(進学コースでは無理そう・・・)

・段落の要約を板書(キーワードが含まれているか、日本語の使い方が正しいかなどを瞬間的に判断して、その場で評価)

・熟語を組み合わせて、オリジナルお経(的なもの)を作る

・文章の各段落の関係図を書く(これも進学コースではちょっと・・・)

・文の中の項目がいくつあるか、学生の解釈が分かれたときにそれを板書し、話し合い



4 活用型学力


1 プレゼン・・・グループで話し合ったことをポスターなどにビジュアル化する


まとめ方のポイント

・書き方のバランス

・矢印や囲みを使った整理

・色使いの、統一と変化の工夫

・ひとめで分かる文字の大きさの工夫


使用したのは模造紙ではなく、静電気を利用して壁や窓に自由に貼れるビニールシート



2 マッピングされた内容をもとに行うローテーションのペア討論


ローテーションのポイント

・ずっと同じ場所に座っている学生と、その隣の一つずつ席を移動する学生とどう移動するのか指示する

・一回の討論は2分30秒

・3~4回繰り返す



5 参加型板書をスムーズに行うための下準備&チェック




☆☆☆☆☆☆☆


どうでしょう?

例えば、1の③なんかに関しては、どうしてもクラスにはすぐできる学生と時間がかかる学生がいて、それぞれにどう対応したらいいのかっていうことに苦慮されてる先生は多そうです。

それを参加型板書によって、解決しようという試みですね~

3については、この本が小学校の国語の授業のためのものである関係上、上記のような授業例になっていますが、日本語教育には日本語教育のやり方があり、それにフィットする授業例も考えれば出てきそうです。

なので、私も考えます。

4もおもしろいと思います。

プレゼンっていうと、パワーポイントが主流ですが、そういう流れの中であえてアナログなポスターっていうのがよさそう。

ここに書いてあるビニールシートっていうのは、この本の中にも写真があるんですが、私はあんまり見たことがないモノです。

文房具屋とかに売ってるモノなんですかね?

今度また探してみます。

最後の5の詳細は特に今回は書きませんでしたけど、細部まで丁寧に考えられていて、「あっ、確かにこういう準備ができてたら、スムーズにいきそう」って思える配慮がなされてます。


因みに、今私は一般的な日本語学科とかではなく進学コースで教えているため、そういう観点で書いた箇所もありますが、日本語学科で教えてらっしゃる先生には役立つ部分かもしれません。


で、私がすぐにこの「参加型板書」が取り入れられそうなのが、月曜日の小論文の授業です。

こないだのエントリ → 「やさしい論理的思考トレーニング」の「できるだけ書いてみよう」で珍回答続出 でおこなった活動などで使えそうです。

このエントリの「リストアップ」は今後もやっていく可能性が大きいので、リストアップできた人から順番に板書していくとか、面白いかも


またこの「参加型板書」をやったら、どんなことになったのかブログでご報告します。

あ、もちろんこの「参加型板書」だけが板書の手法ではなく、目的が違えば他の板書のしかたのほうが効果的だったりします。

でも、こういうやり方があるっていうのを知っていれば、教師の引き出しが一つ増えることになります。

それに、この本の中には小学生の板書の写真がふんだんに掲載されていて、それを見てるだけでも楽しいです。



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参加型板書システム&アイデア 国語授業がアクティブに変わる! [ 八巻修 ]
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