2018年04月

2018年04月29日

日本語の教科書で意外と取り上げられない「日本の庭」

関西の日本語学校の校外学習の定番といえば、やはり京都の神社、寺などです。

かくいう私も去年の秋の校外学習で、学生を京都の嵐山に連れて行きました。(→校外学習で嵐山へ行って色々大変だったから反省したことと考えたこと) 

この時は学生も見学しながらキャッキャキャッキャ言って撮影しまくり、おばんざいに舌鼓を打ったりしてただけなんですが、本来であれば天龍寺の歴史や庭園についても前もってインプットしておけば、より充実した校外学習になっていたと思います。

特に天龍寺は「枯山水」がありますし。

ただ、私たちのコースは進学コースっていう若干の特殊性があり、留学試験が終わったばっかりっていうタイミングでもあったので、仮にインプットしたとしてもそこまで興味を持ってくれたかどうかは疑問です。


今こんなことを書いているのは、昨日明治大学で行われた「普請文化フォーラム2018(一般社団法人 伝統を未来につなげる会)」に参加し、その中でも日本庭園が取り上げられていたことも理由の1つです。

このフォーラムに関しては、別ブログで書く予定です。


☆☆☆☆☆☆☆


それともう1つこのタイミングで私が日本の庭について考えているのは、大掛かりな庭園とは行かないまでも備前市の庭付き一戸建てで「庭づくり」を始めているから。

枝垂れ梅の開花と、「花」に対する意識の変化

思った以上に楽しい地植え!今回は、「高野槙(コウヤマキ)」と「ギボウシ」

もう、何か庭木を1本植えるだけでも考えることが山ほどあります。

 
例えば、以下のようなことです。


1 地植えにするか鉢植えにするか

2 高木か低木か

3 常緑樹か落葉樹か

4 花が咲くものか咲かないものか

5 夏の直射日光も大丈夫か半日陰が良いのか 

6 西日が当たってもいいのかダメなのか

7 乾燥に強いのか弱いのか

8 病害虫に強いのか弱いのか

9 生長が早いのか遅いのか

10 剪定に強いのか弱いのか

11 移植できるのかできないのか

12  寒さ/暑さに強いのか弱いのか


などなど。

考え出したらキリがないので、このくらいにしておきます。

そして、これらの項目をトータルで考えて、ベストな種類の庭木をベストな場所に植えることになります。

例えば、南に高木を植える場合、夏は葉が茂って日除けになるからいいんですが、冬日差しを遮るとせっかくのポカポカ陽気が味わえなくなるため、通常こういう場合は晩秋に葉が落ちる落葉樹を選びます。

また、葉焼けしやすい草木は、午前中だけ日が当たるところや比較的大きめの木の根元に植えます。


ここまで色んなことを考えないといけない日本の庭なのに、なんで日本語教育の教科書にはあんまり取り上げられてないんでしょう?

普通に素朴な疑問です。 


一般家庭の庭であれば、十分中級レベルくらいで扱えそうです。

さらに上級になると、日本庭園なども扱えそうですし、町屋の坪庭なんかを取り上げるのも面白そうです。


上記の「普請文化フォーラム」の日本庭園をご説明された先生も、「今までの全ての万国博覧会で常に出されているのが『 Japanese garden 』 だ」とおっしゃってました。

去年の文法クラスのベトナム人男子の中には、「盆栽」に興味を持っている学生もいました。


「日本の庭」は、日本語教材で取り上げる価値があるんじゃないでしょうか?


ほな、さいなら!


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akky_san at 20:47|PermalinkComments(0)教材 | 教科書

2018年04月27日

日本語教師 akky が完全に意味を誤解してた日本語

私、本日は明日参加することになっているとある講演会に参加するために、東京に来てます。

なので、前もってちゃんと予習しておこうと先ほど講演のテーマについて調べ始めたところ、そのテーマにあたる日本語の意味を、ずっと勘違いしてたことが発覚。

いや〜久々のショック。


そして、その日本語が何かというと、

普請


なんです。

まず、これ留学生読めないでしょうね。

読み方が特殊な上に、この言葉のジャンルも留学生には縁がなさそう。

普請は「ふしん」と読みます。


私、普請の意味を「家屋などの建築物を改築、修繕したりすること」だけだと思ってました。 

確かに、今はその意味としてだけ使われることもあります。

しかしながら、そうするとなぜ「普」と「請」の漢字を使うのか説明がつきません。


この言葉は本来、禅宗の信者がお互いに協力して作業を行う、という意味だったそうです。


はい、漢字の読みの謎、解けました。


仏教関係だったから、ですね。


さらに、漢字の読みではなく意味に注目すると、「普(あまね)く請(こ)う 」つまり「多くの人に広く呼び掛けて、労役に従事してくれるようにお願いする」という意味だったんです。


したがって、本来の意味だと「作業を行う」ことより、その地域での「互助活動」や「相互扶助」の意味合いが強かった言葉ということになります。

ただ、そういう意味だったのが、お寺の修繕、道や橋のインフラ整備の作業自体を指すようになっていったようです。


今でも残っている代表的な普請といえば、白川郷など合掌造りの屋根の萱の吹き替えなどです。


ちなみに明日私が参加する講演会というのがこちら。 → 普請文化フォーラム2018」未来へ継承すべき伝統建築・庭園・石垣技術


☆☆☆☆☆☆☆


いや〜日本語教師でも意味を勘違いしてたりするのって、あるもんですね。

そして、こういうことで一番怖いと思うのが、きっかけがないと気づくことができないってこと。

さらにその上、そういうきっかけをもたらすものが自分にとっては未知のジャンルの情報ってことが多いな、と私は思います。


なので結果的に、1つの領域にずっとい続けたり、全く畑違いの領域の情報にずっと触れない人というのは、こういう気づきを得られにくくなってしまいます。


気をつけましょう。


ほな、さいなら!


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akky_san at 22:13|PermalinkComments(0)日本語 

2018年04月26日

今月の文法クラスの授業で気づいた、去年の学生との大きな違い

今月は、文法クラスで6回授業を担当しました。

この6回の授業を通して気づいたことがいくつかあります。


1 去年の人たちよりおとなしい

2 文法の理解力が高い

3 作文を書くスピードが早い

4 読解で変な間違い方をしない


などです。

ただ、聞き取りは去年の学生の方ができてたようですが。


そして、これ以外に今日気づいたことが1つあったんです。

それは、比較的自由なアウトプットをする際に、最初っから最後まで辞書に頼りっきりにならない

ってこと。

最初は「辞書を引く」って習慣が無いのかな?と思ったんですが、必要に応じて辞書は使ってました。

つまり、彼らの行動が意味してるのは、日本語で分かる部分はあるけどもわからない部分だけ辞書を使うってことなんです。


昨年度の学生は、おそらく最初の段階でベトナム語が頭に浮かんでいて、その内容に該当する日本語を知らなかったから徹頭徹尾辞書に頼らざるを得なかったんです。

ところが、今年の文法クラスの学生は、自分が考えた内容を表す日本語をある程度知っていて、日本語でどう表現すればいいかわからない部分のみ辞書を使っていたのでは無いかと。


これは、かなり大きな違いであると私は考えます。


そしてこの違いが彼らの日本語能力の向上に、どう関わっていくのかを仔細に観察していきたいと考えています。



ほな、さいなら!



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akky_san at 21:52|PermalinkComments(0)留学生 

2018年04月25日

EJUの読解対策の読むトレーニングの「基礎編」と「応用編」の難易度のギャップが凄すぎて、その橋渡しが必要

今年度の私の文法クラスは、専門学校ではなく大学に進学を希望してる学生が多いです。

もちろん、今の所はなんですけど。

でもまあ、6月のEJUの結果が出るまでは夢見てる留学生もいていいのかな、とも思います。


そして、大学進学が目的の学生に必要なのは、EJUのある程度の点数です。

文法クラスは国公立を狙ってる学生が少ないので、必然的に「日本語」でどんだけ良い結果が出せるかが影響してきます。

なので当然EJUの読解対策もしないといけなくて、今その対策で使っているのが「読むトレーニング 基礎編」です。

これは私が担当しているのですが、「なぜこれを間違うの?」的な間違え方は少数です。

というわけで、「読むトレーニング 基礎編」は比較的サクサク進んでいて、昨年度より早く終わることになりそうなんです。

そうすると、次は一般的には「読むトレーニング 応用編」に入ることになるのですが、この「読むトレーニング」は基礎編と応用編の難易度のギャップが凄すぎて、学生が戸惑った上に問題ができなくてかなり自信喪失につながることにもなりかねません。


そこで、私は基礎編から応用編に行くまでに何か別の教材を挟み込む必要があるんじゃないかと思い、色々リアル本屋さんで探してました。


日本語教育関係だと教材が限られるので、日本の学校の範疇でまで探すことになり、結果的にこちらの教材が良さそうだという判断に。

旺文社さんの「中学総合的研究 社会」と「中学総合的研究 理科」です。

旺文社 中学総合的研究 理科 社会


本当は教科書が良かったんですが、ある程度の規模の書店でも教科書は取り扱っていないってことを知らず、手に入れることができませんでした・・・


なので、私の印象で最も教科書に近そうな内容のこれらの2冊を購入したというわけです。


まだあまり本格的に分析はしてないのですが、これらの教材が留学生に有効だと思った理由が以下の3つ。


1 語彙が比較的平易で内容理解のハードルが低い

語彙で引っかかって読み進められない学生は多いんですが、それってめっちゃもったいないんですよね。

逆に考えると、語彙さえ分かっていればある程度の論理的思考ができる可能性が高まるので、これらの教材は留学生の文章理解にも有効であると考えました。


2 事実文のみの文章で内容理解の練習ができる

彼らは「事実文」と「意見文」の区別がつかないことが多いです。

なので、下手に意見が出てくる文章よりも事実だけの文章で読解の練習をした方が効果が出てくるんじゃないか、と私は今考えています。

なので、とりあえず事実文を読んで事実誤認をしないように読めるように指導する、っていうのが私の目下の授業目標です。


3 ネタがEJUの総合科目や理系科目の内容とカブる

これは、副次的な効果の期待にすぎませんが、まあまあ重要かなと。

彼らの母国での教育がどういうものだったか正確に判断できない以上、日本の大学で要求されるのはこのレベルである、って提示してあげるのも私たち進学コースに入る日本語教師の役割でもあります。

で、本来はそれらの科目の先生方が授業をしてくださるんですが、週1の授業でしかないので、私たちで補填できる部分があれば間接的にでもそうできたらいいなって思ってました。

先ほどは日本語だけが彼らの進路に関係するという旨のことを書きましたが、他科目の成績が良ければあわよくば選択肢が広がる可能性も大いにありますし。


☆☆☆☆☆☆☆


といったような観点で、まだやってない授業ですけど彼らにちょっとでも有利になるような結果になればいいな、などと考えています。


旺文社の書籍はこちら。


楽天ブックス
中学総合的研究理科3訂版 [ 有山智雄 ]
中学総合的研究理科3訂版 [ 有山智雄 ]

中学総合的研究社会3訂版 [ 大野新 ]
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ほな、さいなら!



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akky_san at 22:11|PermalinkComments(0)教材 | 問題集

2018年04月24日

学生のアウトプットを見て考えた日本語教育における国語っぽいアプローチの必要性

いや〜このエントリ(→文法と読解の融合した授業に、さらに活動や宿題を盛り込んで多様かつ総合的な授業に)の時に宿題として書かせたものを見てみましたが、ひどいもんです!

よっぽど今までアウトプットしてこなかったんだろうなと、容易に想像がつくレベル。

 
「アウトプットの量、足りてますか?」って彼らが前に在籍していた日本語学校の先生に、一人一人質問したいくらいです。

私は以前にもこんなエントリ(→ウチの学生の小論文の分かりにくさの原因の7割以上が「情報不足」!ってことでワークシート作成)を書いているんですけど、情報不足の中でも今回顕著だったのが以下の特徴です。

それは、

主語や述語、他動詞の目的格の欠落


です。

そこで、とりあえず今日私が行ったのは、主語と述語の概念の説明。

こういうアプローチって、日本語教育というより国語教育に近いと考えます。

あんまり今まで日本語教育業界では、「主語と述語」の概念は扱ってこなかったように思います。 


そのあと、私が添削したものを返却し、一人一人に色々確認するという流れの授業を行いました。


彼らがアウトプットしたものがこちら。


☆☆☆☆☆☆☆


Aさん

・ロキ(インスタで有名になった、牙が隠れない猫の名前)の形が裸、毛が全然です。そしてロキは自然な遺伝子改変、移植することがありません。

1つ目の副詞「全然」がかかる述語がありません。(確かにこのように省略できるケースもありますが、この学生がそれを知っていたとは考え難い)2つ目の文の「ロキ」の述語って何?ロキは何したの?


Bさん

・(アメリカなどによるシリアへの空爆について)この事件はシリアなりアメリカなり各国と一緒に相談したほうがいいです。

これ、主語は何なんですかね?

「シリアなりアメリカなり」と「各国」の関係が分かんないんですよね〜

この文は、

  1. シリアなりアメリカなりが各国と相談する
  2. 他の国がシリアなりアメリカなり、つまり各国と 

という解釈が可能です。

1は「シリアなりアメリカなり」が主格、2は「シリアなりアメリカなり」が各国の例であるってことになります。

この学生は次のような文も書いています。

・人民は罪がないので、戦争をしないでよく相談した後で決めたほうがいいと思います。

「決める」って誰が?何を?いつ?


Cさん

・ (生物の進化関連で進化論を否定する新説について)単純な細胞は急変で、複雑な細胞に進化しないと言われました

言われた内容ってどこからどこまで?言った人は誰?


この学生が書いた、全く意味不明な文がこちら。

・単純な細胞といっても、構成内にはとても複雑なので(←ここまでは何となく分かる)、短い期間で知っている一番複雑な細胞に変更するのはできないでしょうか。 

「知っている」の主語は何?誰が知ってるの?

それから「変更する」には2つの項目が欠落しています。

それは、主語と目的格です。

誰が?何を複雑な細胞に変更するのか?


☆☆☆☆☆☆☆


他にもひどい人はいましたが、とりあえずこんな感じです。

これを踏まえて、以前のエントリ(→Reading Skill Test で問われる能力を養えるか? akky が選んだ読解問題集)でも紹介した日本人小学生向けの教材も授業に取り入れ用途考えています。

最初の方はかなり簡単なので、まあ間違えることは無いとは思いますが、一応最初っから一通りやってみようと考えています。 


この教材を用いた授業がある程度進んだら、どこかのタイミングで結果を報告しようと考えています。


ほな、さいなら!


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akky_san at 19:09|PermalinkComments(0)日本語教育