2016年06月16日
中級の教科書で文法として扱われない「形容詞語幹+まる/める」が超ムズい
例えば、「『広まる』は広くなる、『広める』は広くするっていう意味ですよ」っていう説明しかしてない日本語教師って結構多そうです。
なぜなら、こういうのを文法項目として取り上げてる教科書が少ないから。
この文法は中級レベルの教科書によく出てきますが、私が知ってる限りでは、文法として扱っているのは「中級日本語」だけです。
なので、結果的にそれ以外の教科書では本文の中にさりげなく出てきていて、教師は「語彙」としてその意味をサラッと説明するっていうパターンになってるケースが多くなります。
意味と形の基本だけなら、「~まる」がつくと自動詞、「~める」がつくと他動詞になります。
それだけならイイんですけど、これには結構ムズい概念も含まれています。
それだけならイイんですけど、これには結構ムズい概念も含まれています。
例えば「高まる/高める」です。
・価値を(〇高くする/〇高める)。
・価格を(〇高くする/×高める)。
のように、使える場合と使えない場合が結構出てきます。
上の例の場合と逆に、「形容詞の語幹 + する」のほうが使えないケースも。
・世論が(×高くなる/〇高まる)
次に、「強まる/強める」です。
・雨脚が(〇強くなる/〇強まる)。
は両方いけますが、
・体が(〇強くなる/×強まる)。
のように「強まる」が使えない場合があります。
さらに、内容は同じものを指していても、使える場合と使えない場合があります。
・雨降って地固まる。
は言えるけど、
・雨が降ったので、地が固まりました。
は(『地』ではなく、土、地面などの言葉に置き換えても)おかしいです。
また、
・この地域では、駅前に店が固まっている。
は言えますが、
・この地域では、駅前に店が固くなっている。
は変です。
「広い」という形容詞に関しては、「広がる/広げる」と「広まる/広める」という2パターンがあって、それぞれ使えるものが違います。
これ、めっちゃムズいです。
・青空が(×広くなっている/〇広がっている/×広まっている)。
・格差が(×広くなる/〇広がる/×広まる)。
・視界が(〇広くなる/〇広がる/×広まる)。
・噂が(×広くなる/〇広がる/〇広まる)。
・道路を(〇広くする/〇広げる/×広める)。
・傘を(×広くする/〇広げる/×広める)。
・視野を(〇広くする/〇広げる/〇広める)。
・教えを(×広くする/×広げる/〇広める)。
もうワケ分かりません。
さらにさらに、「広げる」が物理的な動きである場合、
1 傘、包み、など閉じてあったり畳んであったりしたものを開く
2 道路など、もともとあったものの幅に付け加えて拡張する
3 穴など、もともとの形をそのまま残して面積を拡大する
などの意味があります。
その上、例外まで存在しちゃいます。
基本的にこの文法は、「形容詞の語幹(『い』の前の部分)+まる/める」なんですが、「温かい」の場合は「温かまる/温かめる」ではなく、「温まる/温める」になります。
「苦しい」と「細い」はそれぞれ、「苦しまる」、「細まる」っていう自動詞は存在せず、「苦しめる」、「細める」しかありません。
漢字に関する例外もあります。
「狭い」は「せまい」と読みますが、「狭まる/狭める」は「せばまる/せばめる」と読み、品詞が変わったことによって漢字の読み方も変化してしまいます。
☆☆☆☆☆☆☆
このようにみてくると、「形容詞の語幹+まる/める」というものには、日本語の文を作るうえで必要になってくるルール、すなわち文法を持っていることになります。
だから、私はこれは「語彙」ではなく「文法」の項目の一つとして教えるべきだと考えます。
読んだり聞いたりして理解できればそれで良しとするなら必要ないかもしれませんが、アウトプットしようと思うとルールを知っている必要があり、もしそれを知らなければ誤用が出てきてしまうからです。
今回改めて考えてみて、こんなにややこしかったんだ!って再認識するとともに、今までどうやって教えてたんだろ?と思わずにはいられません・・・
あと、この分析をするために使った書籍が、何回も紹介してるこちら ↓ 。
「てにをは辞典」っていうと、例文づくりで使うモノっていうイメージだと思うんですが、こんなふうに「文法分析」でも重宝するんだってことが今回分かりました。
ネットなどで語彙の組み合わせを拾ってくるより、信頼性がありますし。
ほな、さいなら!
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